31.甲状腺腫

【概念】頚が腫れる病気の中に、甲状腺が腫れる場合がよくあります。甲状腺は生きていくのに大切なホルモンを分泌する内分泌器官です。 バセドウ病は甲状腺ホルモンが多すぎる病気です。粘液水腫は甲状腺ホルモンが少ないために起こる病気です。甲状腺に炎症が起こって腫れることもあり、良性腫瘍や悪性腫瘍(癌)が発生することもあります。甲状腺の病気は何故か女性に多いのですが、その理由は分かっていません。
【診断】甲状腺が腫れ、痛みや発熱がある場合は急性炎症ですが、慢性炎症の時は痛みはなく自己免疫疾患に属します。機能亢進症状の時は心悸亢進、手の震え、眼球突出が見られ、機能が低下すれば全身倦怠、貧血、浮腫が見られます。 一側の腫脹は腫瘍によることが多く、その中には癌も含まれますので安心なりません。 専門医が症状を聞き、注意深く触診すれば、大方の診断はつきますが、超音波検査と細胞診は当日にできる検査です。 血液検査、X線検査、CT像、シンチグラフィー、全身検査など精密検査をいたします。
【治療】機能亢進か機能低下かに応じて、与える薬剤が変わってきます。 若い女性に見られる軽度に甲状腺が腫れ、機能異常は見られない場合は治療する必要はありません。 小さな良性腫瘍であれば手術をせずに経過を観察いたします。 バセドウ氏病で甲状腺ホルモンが多すぎる場合、その一部を切り取る手術をします。 癌であることが判明すれば手術をいたします。癌が周囲に浸潤していると気管の切除もやむを得ない場合がありますし、リンパ節転移があればそれも含めた手術になります。幸い甲状腺癌の手術成績は治癒率95%と高く、よく治る癌に属します。 甲状腺の手術は瘢痕が見える所ですから、細心の配慮が必要ですし、近くに声帯を動かす反回神経が通っていますので、それを損傷しないように手術しなければなりません。 甲状腺の専門医は手術が上手なだけでなく、内分泌機能の調整にも熟知していなければなりません。手術を受ける場合一考を要します。 もし、甲状腺を全部切除した場合は一生にわたって甲状腺ホルモンを内服しなければなりません。副甲状腺の問題もありますがここでは割愛します。
【甲状腺ホルモンとヨード】日本は島国ですから食物として海草を取る機会は多いのですが、大陸に生活する人々や日本でも山奥に住む人は甲状腺機能低下による粘液水腫に罹ることがあります。 海草にはヨードが含まれており、甲状腺ホルモンを作るためにヨードが不可欠なのです。適量の海草類を摂取するように心掛けてください。