33.老人性痴呆

  【概念】「最近、年をのせいで人の名前を度忘れして困る」と言ってる間は正常範囲でしょう。「昨日何処へ行きましたか」「朝食に何を食べましたか」「今日は何日ですか」「ここはどこですか」に答えられなくなると、痴呆という病名がつきます。 わが国では老人の約5%が痴呆になると言われています。大きく分けて、脳血管性痴呆と、アルツハイマー型痴呆とがあり、後者は初老期から発症するものもあります。
【症状】新しい事物の記憶ができない、時間・場所の見当識がなくなる、などが初期症状です。 猜疑心が強くなり、被害妄想が見られ、あの人が自分の悪口を言っている、財布を取られたに違いない、などは良くある症状です。 電話の応答や客人との挨拶はしっかりでき、昔の記憶は比較的よく保たれますので、呆けているように思えません。読み書きも比較的よく保たれます。いわゆる「まだら呆け」の状態がしばらく続きます。進行しますと、妄想、徘徊、興奮などが起こり、次第に人格が崩壊してきます。
【検査】痴呆の場合、意識障害を来たすことはなく、抑欝状態が続くのも別の疾患です。まずは専門家による鑑別診断が必要になります。 症状から診断はつきますが、CT像、MR像を見ますと、脳の萎縮や梗塞など器質的変化が認められます。脳波の変化は少ないようです。
【介護】痴呆を予防する薬剤も出でいますが、抗精神薬、興奮剤、睡眠薬、鎮静剤などはむしろ害がありますので、長期内服薬には注意が肝要です。 初期の痴呆は家族の協力に頼ることになります。子供扱い、甘やかすのはよくありませんが、説得、叱責も効果がなく、できる範囲の役割をしてもらい、できた時の褒め言葉が大切です。 同じ説明も繰り返しを厭わず行い、大切なことはメモ書きにして持たせます。今日の予定、家族が帰宅する時間、忘れかけた人の名前など、メモに書いて渡しておくと、何度も読み直して安心しています。 自分で書ける間は、勉めて日記を付けるように勧めます。昔のアルバムや手紙などを見て若い頃を想起するのは良いことです(想起療法)。 テレビの見過ぎはよくありません。テレビは一方的ですから、自分で考える要素がありません。 人格崩壊を来たし、家人の識別も困難になり、異常行動が激しくなれば、病院または施設へ預けざるを得ません。その判断は、むしろ家族の負担軽減を優先させるべきでしょう。
【予防】肺炎などの大病、骨折などの長期臥床は痴呆を増悪させますから用心しましょう。 若い頃から趣味をもち、年を取ってからも勉強を続け、対人関係をよくし、ボランティア活動に生き甲斐を見つける、などは痴呆の予防になるでしょう。